2016年9月18日日曜日

魂を成長させる選択


数年前、私の友人は40代の若さで、奥さん(享年38歳)を亡くしました。

その時、周囲には涙1つ見せませんでした。

友人は、ミスが許されない仕事に従事していて、多忙を極めています。

歯の治療で、口の中を診ていますが、ストレスに満ちた生活をしているのが良く判ります。

中学生の子供が2人いて、家庭でも寛ぐ時間があまりないようです。

精神的にぎりぎりの状態で、1日1日をどうにか乗り越えて来ているように見えました。



奥さんが亡くなって数年後のある日、付き合っている女性がいると聞きました。

それを聞いて私は、子供たちのためにも、見守っている奥さんのためにも、もう少し一人で頑張って欲しかったと思いました。

そんなことを思う私に、「家庭を守ってくれる人がいて、癒やされないと身が持たない。普通の生活がしたい。」と、ポツリと言いました。

奥さんがいた日々は、とても楽しそうで、幸せを絵に描いたような家族でした。

料理を作るのが大好きな奥さんと、団らんしながら食事をすれば、激務の疲れはどこかに行ってしまっていたでしょう。

そんな日々から遠ざかって久しく、心身が悲鳴を上げていたのかもしれません。

返す言葉はありませんでした。



それからしばらくして、付き合っている女性の写真を見せてもらいました。

そっくりではありませんが、はにかんだ時の雰囲気が似ていて、その女性の中に奥さんの面影を見つけました。

彼女に家にいてもらいたいと思う気持ちが、少し理解できました。

友人の想いは私には判りませんが、奥さんを忘れてしまうはずなどなく、過ごした日々がとても懐かしく、もう1度、取り戻したいと思ったのかもしれません。

何とも言えない気持ちになりましたが、家に入って果たして上手く行くのだろうかと心配になりました。

たとえ姿形がそっくりであっても、人の本質である魂は、全く別ものです。

彼女に、奥さんを求めたとしても、それは無理です。

子供たちにとって彼女は赤の他人であり、お父さんの意識がそちらに向かってしまうのは、多感な時期なだけにとても気がかりです。



奥さんの命日は、彼の誕生日です。

亡くなった後に、私を通して奥さんが伝えてきたことは、「あなたはこの世で愛した、たった一人の人」であり、魂の存在など信じるような人間ではありませんが、その言葉を神妙に聞き入っていました。

自分のことを絶対に忘れて欲しくないと想っていると、その時は解釈しました。

しかし、どうやら違っていたようです。

亡くなる前に「誰かと一緒になっても良いよ」と、言ったと聞きました。

強がりで言っているのではなく、友人の幸せを願いながら、この世を去ったと思いました。

肉体のともしびが消える時に、余分なものは全て削ぎ落とされ、最も大切で、最も崇高なものだけが残るような気がします。

最後まで残ったものは、愛だと思います。

それ以外のものは、何もなかったと思います。



人が追い求めているものは、実はどうでも良いものが多いのかもしれません。

大切なものに気付かないまま、生きているような気がします。

ぎりぎりまで追い詰められないと、本当に大切なものは見えてこないのかもしれません。



人生の出来事の表面だけ見るならば、友人は奥さんを喪った不幸な人です。

しかし、文字と文字の間に小説家の意図が隠されているように、人生で起こる出来事の内面に、真実(真理)が隠されています。

真実が見えてこないのは、目に映る現実が全てだと思っているからです。

死んでしまえば、全て終わりと、錯覚しているからです。

生命とは魂であり、肉体の死の後にも、生命は連綿として続いています。



人は魂を成長させるために、生きています。

魂の成長は、困難や障害を乗り越えていく過程において、そして他者に愛を表現することで得られます。

そのことを念頭において、出来事を振り返ると、隠されている真実が見えてくるかもしれません。



もし、夜がなく、昼だけの世界だったら、光の意味、ありがたさは判りません。

光と闇、愛と憎しみ・・・ この世は比較対照するものがあるので、大切なものが浮かび上がってきます。

争いや病気、別れなど、この世でしか経験できないことを通して、大切なものに気付きます。

楽しいだけの人生だったら、気付くことはなく、魂は成長しません。

それゆえに、苦しみや悲しみを伴うような出来事が、人生で必ず起きるようになっています。



奈落の底に突き落とされるような出来事が起こり、暗闇の底にいる時に、人はどうにかしてそこから逃れようとします。

手さぐりをしながら何かを探し、ふと手に触れたものを、思わず掴みます。

それを力いっぱい引っ張ってみて、しっかりとしているものなのかどうかを確かめます。

びくともしないものであれば、全体重を委ねて、手繰り寄せながら、必死に這い上がって行きます。

その堅牢なロープのようなものが、隠された真実だと思います。

暗闇の底から、這い上がった時に見えるのは、前よりも生命の輝きに満ちた世界です。



真に豊かな人とは、人生でさまざまな経験をして、いくつもの真実を身に付けている人です。

目に見える財産は、死と共に消えてなくなりますが、忘れがたい経験を通してに身に付けた真実は、魂を光り輝かせる永遠の財産となります。

より多くの真実を身に付けながら、魂を成長させるために、この世に生まれて来ています。

奥さんを喪う経験を通して、友人の魂は大きく成長し、最も大切な真実を身に付けたのかもしれません。



少し前のことですが、友人から、彼女が妊娠したと聞かされました。

あまりに性急に事が進むので、子供たちのことが気がかりですが、新しい家族の誕生を祝福したいと思います。

あの世で見守る奥さんは、どう思っているのでしょうか?

友人の将来を心配していたので、嫉妬や失望などはないと考えられますが、子供たちが悲しんだり、寂しい思いをすることがないように願っていると思います。

もしかしたら、好みの料理を作ってやるように、彼女にインスピレーションを送っているのかもしれません。

ちょっと寂しい想いをしているでしょうが、大きな愛で、家族を導いているような気がします。



友人は、家庭で癒され、雑事から解放されて、仕事に集中できるようになるかもしれませんが、より多くの愛情を求められ、それに応えながら、生きて行かなければなりません。

家庭内の人間関係では、だいぶ苦労するでしょう。

友人は、楽になろうとして、より困難な人生を歩もうとしているように見えます。

魂をより成長させる選択を、知らずにしているように思えてなりません。













5 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

初めまして。
最愛の彼を喪って2年間がたちました。
少しして会社を辞め転職しましたが、沢山の様々な理由で、つい先日1年半で辞めました。会社では心を押し殺して、冗談にも乗ってあげたり、フツーを装う事に、最大限のエネルギーを使って、段々と、自分の心の中と外の差が激しくて、自分でもバランスがとりづらくなりました。

収入源がないので働かなければなりませんが、許されるなら、社会と縁を切って籠りたいです。

今の私を支えるものは、彼が傍にいてくれる、と信じる事だけです。この信念も、切れそうな細い糸1本を必死につかんでるような状態で、なにかがあれば、崩れてしまいそうです。

私には知り得ない大変な思いがおありだったと思いますし、人の人生なのでその方にも幸せになって頂きたいと思いますが、ちょっと淋しい気がします。うちの彼が「誰かと結婚していいよ」と言ったとしても、私には無理です。

つらいです。いつ、迎えに来てくれるのだろうと思います。こちらに居た時と同じように触れられなくても、せめめ彼の笑顔が見たい、声が聞きたい。なんで霊感がないのだろう。

イクミ さんのコメント...

匿名様

はじめまして、イクミです。
ブログを読んでいただき、ありがとうございます。

最愛の人を喪って2年経ったということですが、彼がいない現実の前では、悲しみが癒えることはないとお察しします。
あなたがどれほど悲しんでいるのか、周りの人には判りません。
生きているだけでもつらいのに、人に合わせたりするのは、とても疲れるでしょう。
それでも、普通を装って、働いていかなければならないのは、とてもつらいと思います。

ブログに載せた友人は、職場ではリーダーなので、奥さんを亡くして、数日も仕事を休むことはなかったと思います。
悲しむ暇さえないように見えましたが、人知れず涙を流していたのに違いありません。
奥さんのことは、忘れているはずはありません。
年下でしたが、彼の足りない部分を補ってもらえる人であり、はっぱをかけられながら頑張っていました。
私としては、子供2人を一人で育て上げ、奥さんに胸を張って逢って欲しかったです。
けれども、このままで行ったら、友人が身体を壊してしまう可能性があり、そうなれば子供たちが1番困ってしまいます。
同じ最愛の人を亡くされた人でも、置かれている立場はそれぞれ違います。
やむを得ない、選択であったのかもしれません。

あなたには、彼しかいないと思います。
想いは同じであり、心はひとつと思いたいのですが、あなたには彼の姿は映らないので、自信が持てないのかもしれません。
しかし、姿は見えなくなっても、以前と同じ性格のまま生きています。
あなたに想われていることを、とてもうれしく感じているでしょう。
彼を想えば、直ぐに寄り添います。
これは、慰めでも、励ましでもありません。
どう伝えれば、信じてもらえるのか、いつもじれったく思います。

笑顔を見たり、声を聞くことはできませんが、彼の想いは受け取ることはできます。
彼と、想いでつながることはできます。

あれこれと考えるのをやめて、悲しみなどの感情を追い出して、頭をからっぽにして、彼に想いを投げかけて下さい。
「大好きだよ」とか「いつも一緒にいてくれてありがとう」とか、彼が喜ぶような言葉を投げかけて下さい。
その時に、早く想いを返してきて欲しいとか、どんなことを思っているの?とか、自分から答えを求めずに、受け身の姿勢でして下さい。

彼からの想いは、耳で聞こえるのではありません。
パッと頭に湧いてくる言葉、
浮かび上がる画像のようなイメージ、
深いところが揺さぶられるような感覚、
そのような変化を起こし、あの世の彼は想いを伝えて来ます。

悲しくなったり、涙ぐむのは、ご法度です。
1番うれしかった時のことを思い出しながら、隣にいると思って、愛する想いを抱きながらやってみて下さい。
しばらくは受け取れなくても、そのうちに彼がコツをつかみ、成功するかもしれません。
霊感が弱くても、大丈夫です。
彼を信じて、あきらめずに、何回もやってみて下さい。

彼は見えなくなっても、ちゃんと生きています。
想いを通して、あなたの魂とつながろうとしていると思います。

匿名 さんのコメント...

お返事ありがとうございます。
よくわかります、私は彼と同じ会社で、役職を持っていましたので、翌日も部下をケアしなければならず、表面はなるべく普通に、心は機械のように働き続けました。我ながら、よく出社し続けたと思います。それも、彼の名誉を守る為だったので、できたのでしょうね。

彼が傍にいてくれると言って下さって、ありがとうございます。本当にありがとうございます。これまで何度も霊媒の方に見て頂きました。私にしかわからない彼がいいそうな事など、届けて貰いましたが、最後の1%がどうしても・・・涙はご法度なんですね。まだまだ感じられそうにないですね、さきほども、彼との思い出の品を見たら思いも涙も溢れてきてしまい、掃除をやめてしまいました。何年たったら悲しまず涙も薙がさないようになるのか、気が遠くなりますね。

自分の思考と交わらせないで、彼の思いを認識できるのでしょうか。特別な感覚、霊感を持っていなくても、私みたいに鈍くても、彼を感じられる日がくるのでしょうか。

この前お会いした霊媒さんも、彼が、私に一生懸命自分の存在を伝えようとしている、と、言われました。私が毎晩手を合わせて、私にたくさん話しかけて、とお願いしているからかもしれませんね。

居ると言ってくださって、本当にありがとうございます。

イクミ さんのコメント...

匿名様

お仕事大変だったのですね。
あなたの想いを判っていたのは彼だけです。
どれほど励ましてやりたかったでしょうか。

最後の1%は、この世に生きている限り誰でも埋められないと思います。
最後の1%は、逢った時に消えるのでしょう。

悲しみのオーラがあなたを包んでいると、彼は近寄れません。
難しいかもしれせんが、自信に満ちた、明るいオーラを出している時の方が接近しやすいと言われています。
あなたは肉体を携えた魂(霊)であるため、霊感は必ずあるはずであり、肉体と頭脳が障壁となっているだけです。
彼への想いを、語りかけて下さい。
たとえ答えを感じなくても、彼は喜んでいるはずです。
直ぐにではなく、何も考えずに仕事や作業をしている時に、想いを投げ返してくるかもしれません。
頭が空っぽになっている時に、受信感度は増しています。
私も、必要な時に背後霊から助言を受けていますが、その答えが自分の願望や思考ではないかと思う時がありました。
でも、その答えに素直に従うと、良い結果が得られるようです。
彼が返答しやすい形で、想いを投げかけた方が良いかもしれません。

事実だから何回でも言います。
あなたは彼と共にいます。
愛する想いは、死によって少しも失われていません。
愛は魂を引き付ける力であり、魂と魂は固く結ばれています。

匿名 さんのコメント...

ありがとうございます。
本当にありがとうございます。
そう言って頂けると、限りなく100%に近くなる気がします。
明るいオーラ...同じことを、以前、霊媒の方に言われた事があります。どうやったら悲しみが消えるのかわかりませんが、とにかくイクミさんの言葉を信じて、やり続けてみます。

本当にありがとうございます。