断崖絶壁の上に立つと、恐怖を感じて足がすくんでしまいます。
ところが、命綱なしで断崖絶壁を登って行く人もいます。
そんな人は、勇気があるというよりも、恐怖を感じにくいのかもしれません。
いわゆる自己防衛本能は地上の自我(以下自我)の働きによるものです。
恐怖が生じるのもその一環です。
自我により、私たちは自己表現をしています。
同時に、自我は肉体を守ろうとします。
もし、恐怖が生じなかったとしたら、身の危険を感じなくなり、崖から落ちてしまうかもしれません。
地上は物質的な世界です。
表現媒体である物質(肉体)は不完全です
そのため、思念を完全に表現することはできません。
自分の思いを、言葉にできないこともあるでしょう。
思い通りに行かずに、失敗することもあるでしょう。
失敗して被る不利益を想像すると、怖れを感じてしまうこともあります。
地上では自分とは違う人たちに囲まれながら生きています。
そのため、人から思いもよらぬ言動を受けることもあります。
傷つけられてしまうと、その後、人を怖れてしまうこともあるでしょう。
怖れは、地上を生きるために必要な感情です。
けれども、必要以上に怖れが生じると、成長の妨げとなります。
生まれる前にいたのは、思念の世界です。
肉体を介さずに思念が表現されるので、地上のような失敗はありません。
周りには、自分と同じような人間しかいないので、傷つけられる心配もありません。
怖れから解放されています。
平和で安全な世界を離れて、怖れが生じる地上に生まれて来たのには、理由があるはずです。
私は中学同窓会の幹事をしています。
以前ですが、同窓会を開くことになり、クラスメートに電話連絡をして、参加するかどうかを確認しました。
クラスの中心的存在で、みんなに好かれ人気者の男子がいましたが、意外にも出席を拒みました。
後になって他の同級生から、別のクラスの生徒からいじめを受けていたと聞き、それが原因だと思いました。
それから、いくら声をかけても参加することはありません。
怖れは、苦痛を伴う過去の出来事から生じていることが多く、根深い感情です。
クラスメートに生じていた怖れは、今も消えていないのかもしれません。
怖れの裏に、怒りや憎しみの感情が隠されているのかもしれません。
身の危険を感じるような状況では、怒りや憎しみを通り越して、怖れが生じます。
戦争もそうです。
近くに爆弾が落ちている時は、怖れしか感じません。
地上を生きている限り怖れは付きものですが、好ましい感情ではないので、どうにかしたいものです。
「全き愛は恐れを締め出す」これはイエス・キリストの言葉です。
さまざまな解釈があるでしょうが、私はこう思います。
恐れ(怖れ)は、自我(精神)から生じています。
愛は、精神より高次の魂から生じています。
魂が主で、精神はそれに従います。
怖れよりも愛の力の方が優るので、締め出すことができると考えられます。
けれども、怖れを抱いている対象を愛そうとするのは困難です。
こう考えるようにしています。
自分も怖れを抱く対象も、本質は同じです。
どちらも神が創造した、神を宿した、神(宇宙)を構成する一部に変わりありません。
本質は同じですが、自我の進化の程度は違います。
自我から生まれる言動もさまざまです。
未熟な自我が作り出した言動は虚像であるので、真に受けてはいけません。
怖れも、未熟な自我が作り出した虚像です。
虚像には、実体はありません。
魂から生じているものは真実であり、実像です。
実像には、実体があります。
目に視えない愛は、実体があります。
実体が視えなくなる地上では、信じることが必要になります。
信じることで、個と個はつながり、そのつながりを通して、愛が行き交います。
全ての人に神が宿っていると強く信じるほど、怖れは生じないようになります。
あらゆる事象は、自然法則の働きによって起きています。
今まで自分に起きた事象もそうです。
神の心は、自然法則の働きによって顕現して、私たちを成長進化する方向へと導いています。
今起きている事象、これから起きる事象は、良い方向に自分を向かわせていると、強く信じるほど、怖れは生じないようになります。
魂に宿る神の存在、宇宙を支配する自然法則の働きを信じるほど、怖れと言う苦しみから解放されます。
最後に、シルバーバーチの霊訓の1節をご紹介します。
「あなた方はいったい何を恐れ、また何故に神の力を信じようとしないのです。宇宙を支配する全能なる神に、なぜ身を委ねないのです。あらゆる恐怖心、あらゆる心配の念を捨て去って神の御胸に飛び込むのです。神の心を我が心とするのです。心の奥を平静に、そして穏やかに保ち、しかも自信をもって生きることです。そうすれば自然に神の心が、あなたを通して発揮されます。愛の心と叡智をもって臨めば、何事もきっと成就します。」
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