2018年12月23日日曜日

100年後に病気になったら 後編


前回の続きです。(この物語はフィクションです)


私は彼女の言ったことを思い出していた。

これまで、自分を抑えて生きて来たのは確かであり、知らない内に想いが溜まっていたとしてもおかしくはない。

想い(思念)によって現実が変わって行くのは確かだが、肉体も変えてしまうのか?

が罹った病気は、命を奪ってしまう恐ろしいものと思っていたが、本当の自分(魂)を目覚めさせ、成長させるために存在している、そう考えると怖さが和らぐ。

この病気をきっかけにして、何かが変わるのであれば、それは悪いことではないのかもしれない。

病気を治すお手伝いをすると彼女は言っていたが、今日は何をするのだろうか?

色々なことを考えている内に、彼女の家に到着した。



彼女「おはようございます。今日はお身体の具合はいかがでしょうか?」

私「相変わらず痛みはあります。」

彼女「前回はいろいろなことを話しましたので、少し驚かれたでしょう。その事実に基づいて、今日は病気を治すお手伝いをしたいと思います。」

私「私の病気は治るのでしょうか?」

彼女「無責任のように聞こえてしまいますが判りません。」

私「なぜ判らないのですか?」

彼女「説明が難しいのですが、治る時期が来ていれば治りますし、そうでなければ治りません。」

私「治る時期?」

彼女「そうです。これから私がヒーリング(霊的治療)を行います。あなたがその力を受け入れる時期が来ていたならば、病気は癒されるでしょう。」

私「力を受け入れる時期?」

彼女「少し説明が必要なようですね。病気は因果律の働きによって生じます。何らか原因があって、その結果として病気になります。」

私「私は内に溜まっていた想いが原因で、その結果として病気になったのですね。」

彼女「そうです。さまざまな想いが内部にあって、それが病気となって外部に表現されたのです。これまでの人生であなたの魂が成長をして、その想いを解放する時期が来ていれば病気は治るでしょう。」

私「想いを解放するとは?」

彼女「内にある想いが外に出されることです。あなたは悲しくなったら涙を流すでしょう。それは悲しみの想いを涙によって肉体で表現して外に出しているのです。涙を流すとスッキリしませんか?」

私「します。」

彼女「イライラした時に、大きな声で叫んでいる人はいないでしょうか?」

私「時々見かけます。」

彼女「それも叫ぶことで想いを出して、楽になろうとしているのです。」

私「でも、怒りや憎しみの想いを外に出してしまったら大変なことになります。」

彼女「それは相手を傷つけてしまうことになりかねないので、いけないことです。」

私「それでは解放されないままではないですか?」

彼女「そうです。表現することが難しい想いが、内に溜まってしまうのです。」

私「健康に良くないのですか?」

彼女「良くないので、人は体を動かしたり、趣味に没頭したり、おしゃべりをしたりして解放させようとしているのです。」

私「ストレス解消ですか?」

彼女「そう言うことです。」



私「私は、想いを解放することは出来なかったのですか?」

彼女「そうです。あなたは幼かったので言葉や行動で表現することが出来ず、しかも強い想いだったので、解放されなかったのです。」

彼女「過去の表現出来なかった想いが、時を経て因果律の働きによって、肉体上に病気となって表現されています。」



彼女「ところで、あなたは今どんな思いですか?」

私「これから先どうなってしまうのかを考えると、不安でいっぱいです。」

彼女「そうですか。実はその強い不安も過去に生じていた表現できなかった想いであり、この病気を通して表に出て来ているのです。」

私「怯えていた時に、生じていたものですか?」

彼女「そうです。」



彼女「不安や怖れの想いが溜まって全く気付かずにいたのですが、知らない内にあなたの成長を妨げていたのです。」

私「どうして不安や怖れがあると、成長が妨げられるのですか?」

彼女「もし目の前に、挑戦するべき課題や困難が立ちはだかった時に、心の中に不安や怖れがあったらどうでしょう?」

私「しり込みしてしまいます。」

彼女「そうですね。」

私「しり込みをしてしまうのは、そんなにいけないことなのですか?」

彼女「あなたがこの世に生まれて来たのは、挑戦したり困難や障害を乗り越えながら、成長して行くためにです。怖れや不安があると、挑戦したり乗り越えて行こうとする気持ちが削がれてしまいます。それは成長の機会を1つ失ったことを意味します。

私「臆病になるのはいけないのですか?」

彼女「そうです。臆病は成長の大敵です。」



彼女「病気が判って、あなたはどんな気持ちになりましたか?」

私「何で自分がこんな病気にならなければいけないのか、正直腹立たしかったです。」

彼女「その憤りの想いも、過去に生じていた想いと考えられます。何で自分だけがこんなひどい思いをしなければならないんだと思っていたはずです。

私「確かにそうです。」

彼女「憤りの想いがたくさん溜まっていて、人のために何かをしようとする気持ちになれるでしょうか?」

私「それは難しいかもしれません。」

彼女「人や社会のために奉仕をすることは、自分の成長につながっています。しかし、想いを溜めたままでいると、その機会を逃してしまいます。病気を通して、成長を妨げている想いが表現されているのです。」

私「病気にならない限り、気付くことはなかったのですか?」

彼女「そうです。」



彼女「あなたは内に溜まっている想いに気付いて、それを解放させるために、病気になったのです。」

私「心に何か重苦しいものを感じてはいましたが、それが過去に生じていた想いとは気付きませんでした。その想いを解放するためにはどうすれば良いのでしょうか?」

彼女「不安も怖れも、怒りも憎しみも、ある1つのものによって解放されます。」

私「それは何でしょうか?」

彼女「愛です。」

私「愛?」

彼女「もし、あなたが愛で満たされていたとしたら、不安や怖れや怒りや憎しみを感じるでしょうか?」

私「感じません。」

彼女「それらの想いは愛と相反するものなので、同居することは出来ません。愛で満たされたのなら解放されるのです。」

私「愛で満たされるために、どうすれば良いのでしょうか?」

彼女「霊的に成長すれば、自然に愛で満たされるようになります。」

私「どうしてですか?」

彼女「愛の始源である神とより高い波長で同調するからです。」

私「高い波長で同調?」

彼女「神と人とは、一人の例外もなくつながっています。しかし、低い波長でつながっている人もいれば、高い波長でつながっている人もいます。霊性によってその高低は決まります。」

私「低い波長でつながると、どうなるのですか?」

彼女「生じる想い(思念)に愛の要素が少なくなります。別の言い方をすると、怒りや憎しみ怖れなど、愛に反する想いが生じやすくなります。」



私「では、霊的に成長するためにはどうすれば良いのでしょうか?」

彼女「人や社会のために、奉仕をしていれば成長します。」

私「ボランティア活動ですか?そんな時間は私にはありません。」

彼女「あなたは仕事を通して社会に貢献し、また家族のために頑張って来たはずです。」

私「それで霊的に成長しているのですか?」

彼女「もちろんです。それも立派な奉仕です。奉仕をすればするほど、高い波長で神とつながるようになります。これまでの奉仕によってあなたの魂が成長し、高い波長でつながれば、想いを解放することが出来るかもしれません。」

彼女「ただ、あなたには神とつながるのを妨げているものが存在しています。」

私「それは何でしょうか?」

彼女「この前お話した、生まれてから作り上げてきた自分(自我)です。作り上げて来た自分が強くなり、本当の自分(魂)が覆い隠されていると考えられます。より強くつながるためには、魂が前面に出ていないといけないのです。」

私「もう少し判るように説明して下さい。」

彼女「判りました。魂が地球本体、神が太陽、そして作り上げて来た自分を空に浮かぶ雲だと思って下さい。雲があると太陽の光を遮ってしまいます。なければ光は降り注いで、太陽からより多くの光を受け取ることが出来ます。」

私「でも、雲がなければ地球は熱くなり過ぎてしまいます。」

彼女「雲は地球を守るために必要なものです。しかし厚くなり過ぎると光を遮ってしまい、太陽の恩恵が受けられなくなってしまいます。同様に、作り上げて来た自分(自我)は必要なものですが強くなり過ぎると、魂と神のつながりが弱くなり、恩恵が受けられなくなってしまいます。」



彼女「前置きが長くなりましたが、これからヒーリングを行います。」

私「名前は知っているのですが、どんなものですか?」

彼女「ヒーリングとは、魂に大量の霊的エネルギーを注ぎ込むものと考えて下さい。」

私「霊的エネルギー?」

彼女「生命を生かしている力です。肉体は外部から物的なエネルギー源である食物を取り込んで活動していますが、魂は目に視えない霊的エネルギーを取り込んで活動しています。」

私「違う力によって生きているのですか?」

彼女「肉体と魂は次元が違うのでそうなります。」



彼女「霊的エネルギーによって魂は活動し、様々な想い(思念)が生まれています。想い(思念)は、精神を通して、肉体で言葉や行動となって具現化されています。言い方を変えると、霊的エネルギーは魂から精神、精神から肉体へと巡って、最後は物的エネルギーとなって外に向かって解放されています。」

私「肉体を使って言葉や行動にして、外に向かって表現出来ないと、想いと言うエネルギーが溜まってしまうのですね。」

彼女「その通りです。」



彼女「ヒーリングのエネルギーによって、溜まっている想いが外に押し出されると考えて下さい。淀んでいる小川が、上流から流れて来た大量の水によって、一気に綺麗になる、そんなイメージです。」

私「ヒーリングのエネルギーの量が大きければ大きいほど良いのですか?」

彼女「一概にそうとは言えません。先程、成長を妨げている想いは愛によって解放されると言いましたが、ヒーリングエネルギーが高い愛を帯びているほど、想いは留まれなくなり解放されます。」

私「ヒーリングのエネルギーが愛を帯びている?」

彼女「エネルギーの始源は神だから愛を帯びているのです。そして霊界にいる医者のような存在によって最適化されて、ヒーラーを通して、地上の人に届けられます。」



彼女「そして、ヒーリングによって魂が賦活化されて、目覚めさせることができれば、目的は達成されたことになります。」

私「神の愛によって、魂が目覚めて、病気が治ると言うことですか?」

彼女「そう考えて差し支えありません。」



彼女「ただし、ヒーリングによって魂が目覚め、想いが解放され、霊的次元で浄化が起きたとしても、肉体的次元で反映されない時があります。」

私「それはどんな時ですか?」

彼女「一昔前まで、ガン細胞を消滅させようとする薬(抗ガン剤)が使われていましたが、ご存知でしょうか?」

私「知っています。」

彼女「その薬の副作用で、ガン細胞を排除する(免疫)機能に大きなダメージを与えてしまうと、せっかく想いが解放されても、肉体上で治癒が起こらなくなってしまいます。」

私「そんなに悪いものだったのですか。」

彼女「霊的に病気を捉えてなかったので、そんな愚かな行為がまかり通っている時代がありました。人間が作った薬によって、神から与えられた病気を治癒させる機能を台無しにすることは、絶対に許されません。



彼女「それでは始めましょう。ベッドの上に仰向けになって下さい。」

ベッドに横になると、彼女は患部である胃の上に手を置いた。

彼女「これから始めますが、体が温かくなったり、患部がピリピリしたりしするかもしれませんが心配しないで下さい。もし眠くなって来たら、眠ってしまっても構いません。」

私「はい。」

しばらくすると、彼女が手を置いている周辺が温かくなり、体がポカポカして来るのを感じた。

悲しくもないのに、何故か涙がボロボロと流れている。

すごく安らかな気持ちになって来た。

そして、いつの間にか眠ってしまった。








どれ位眠っていたのだろうか?

目が覚めると、胃の痛みがなくなっていることに気付いた。

そして、重苦しく感じていた何かがなくなり、心がとても軽くなっていた。



彼女「ご気分はどうでしょうか?」

私「すっきりとして、良い気分です。」

彼女「それは良かったです。」

私「これで終わりでしょうか?」

彼女「そうです。ヒーリングの力が私を通して流れて行きました。」

私「ありがとうございます。」

彼女「あなたの魂が目覚めて、病気が癒やされることを祈っています。



戸外に出ると、景色がいつもと違って見えた。

木々の葉、流れる雲、鳥の鳴き声、全てが生命力に溢れ、活き活きとして、輝いている様に感じられた。

この一体感のようなものは何だろう?

自分の中で、何かが変わったような気がした。




数日後、街の医者のところに行き、病気の状態を診てもらうことにした。

私「紹介されたところに行って来ました。今日は病気の状態をもう1度調べてもらいたいのです。」

ドクター「判りました。それでは前回と同じ検査をします。」

検査が始まったが、なぜか知らないが良くなっている気がした。

ドクターは驚いた様子で「前回あった病巣が見当たりませんが、何か処置を受けましたか?」

私「お腹の上に手を置いてもらっただけです。」

ドクター「医学的に説明がつきませんが、どうやら治癒しているようです。」



心の中にあった重しが取れて、何とも言えない解放感を味わっている。

病気が治ったのはもちろんうれしいが、それよりも自分が生まれ変ったような感じがして、それがうれしかった。

本当に大切なものが、はっきりと視えて来て、新たな人生が始まった。


全てのものに、感謝したい気持ちで一杯だ。



数十年ぶりだが、実家に帰って親に会おうと思う。

あれだけ自分を苦めていた親も、実は苦しんでいたのが判ったからだ。

今になって思いが判るようになったのは、眠っていた私の魂が目覚めたせいかもしれない。











2018年12月9日日曜日

100年後に病気になったら 前編



20☓☓年、WHOが健康の定義を変更しました。
 
それまではhysical health(肉体的な健康)、mental health(精神的な健康)、social health(社会的な健康)の3つに分類されていましたが、1998年に提案されたspritual health(霊的な健康)が正式に認められ、書き加えられました。

20世紀は肉体的な健康に重点が置かれていましたが、21世紀に入り心と体が密接に関係していることが判り、心(精神)の健康の大切さが見直されるようになりました。

そして22世紀に入ると、原因不明の病気や生命について、科学的に証明されない霊的な存在を認めることにより、合理的な解釈が進んで行くようになりました。

霊的な健康が、精神的、肉体的な健康に深く結びついてることが、ようやく認識されるようになりました。

内科、外科などの従来の診療科は「肉体的な健康」を対象とする科として存続しています。

新たに「霊的な健康を対象とした科が設けられ、より高い次元から健康を考える時代に入りました。



2118年12月9日の朝、私は胃のあたりにずっと痛みを感じていたので、専門家に診てもらうことにしました。

手首に付けたブレスレット端末により測定された、毎日の体温、血圧、脈拍、心電図、睡眠状態などの基礎データがスマートフォンに転送されています。

アプリを開くと、音声ガイドが始まりました。

「どうしましたか?」
「胃が痛い」と私が答えます。

「いつから痛いのですか?」
私「3ヵ月くらい前から」

「どんな感じで痛いのですか?」
私「ズキズキと痛い」

「我慢できない痛みを10、ほんの少しの痛みを1とすると、今どれ位ですか?」
私「5~6」

「食欲は?」
私「いつもより少ない」

「吐き気は?」
私「ない」

「ストレスを感じる生活をしていますか?」
私「はい」

質問に答えて行くと、症状に該当するいくつかの専門医がピックアップされ、画面上に表示されます。

その中の1つを選択しました。



選択した病院は市街地にあり、肉体的な健康を対象としたケアを行っています。

すでに基礎データは専門医に転送されています。

ドクター「3ヵ月か月前から胃が痛いそうですね」
私「はい」

ドクター「CTと内視鏡による検査をしたいと思いますが、よろしいですか?」
私「はい」

検査の結果、胃の粘膜に病変が見つかり、直ちに細胞が採取されて、AIによる病理診断の結果を待つことになりました。

部屋に呼ばれて入るとドクターが神妙な面持ちで、こう話しかけてきました。

「あなたの病気は胃ガンのようです」
私「本当ですか!」

ドクター「99%の確率でそうです。残念ですがリンパ節にも転移が認められますので、ステージ3となります」
私「・・・」

ドクター「あなたの場合は開腹手術が必要で、胃を半分ほど切除しなければいけません。」
私「・・・

ドクター「外科医の私が提供できるサービスは病変の切除ですが、あなたにはもう1つの選択肢があります。」
私「それは何ですか?」

ドクター「WHOの定義に基づき新設された科があります。」
私「詳しく教えて下さい。」

ドクター「その科で行っているのは温存的な療法です。ご希望であれば所在地と連絡先を教えますので、そこで説明を受けて下さい。」



後日、ドクターに紹介された場所に行ってみると、木立の中に建物がありました。

玄関のドアを開けると、受付の人が笑顔で招き入れてくれました。

自宅の1室が患者さんを診るスペースとなっています。

部屋の中を見渡すと、医療機器も注射器も聴診器も薬も置いてありません。

椅子に腰かけてしばらく待っていると、一人の女性がドアを開けて入って来ました。

私の顔を見ながら、「初めまして、〇〇です。あなたのお体の状況は大体判っています。大変でしたね。」と、微笑みながら語りかけてきました。

その女性は、白衣も手袋もマスクも身に付けていません。

不思議に思った私は、「紹介してもらったお医者さんとずいぶん違いますけど、どんな治療をするのですか?」

彼女「ここでは治療はしません。」

私「では何をするのですか?」

彼女「治すお手伝いをします。」

私「治すお手伝い?」

彼女「そうです。自分で作った病気を、自分で治すお手伝いをしています。」

私「薬をもらって、飲めば良いのですか?」

彼女「いいえ。あなたの病気は薬では治りません。」

私「では、どうするのですか?」

彼女「そのことを説明する前に、1つあなたに聞いておきたいことがあります。」

私「何でしょうか?」

彼女「もし、あなたが死んだら意識も消えてなくなってしまうと思いますか?」

私「多分そうではないでしょうか。」

彼女「それは違います。」

私「死んでも生き続けると言うことでしょうか?」

彼女「そうです。肉体と意識体は全く別に存在しています。

私「急にそう言われても信じられませんが、そのことが病気とどんな関係があるのでしょうか?」

彼女「意識体のことを仮に魂と呼ぶことにしましょう。人は肉体と精神だけでなく、魂(霊)が存在しています。あなたの生命そのものと言っても差し支えありません。魂は精神と肉体の上位にあり、司令塔の役割を果たしています。あなたが涙を流すのも、笑うのも意識の中枢である魂(霊)が指令を出した結果です。」

私「そんなことは考えもしませんでした。」

彼女「あなたの肉体に今問題が生じています。しかし、その原因は霊的な部分(魂)にある可能性が高いと考えられます。」

私「霊的な部分に原因がある?」

彼女「そうです。霊的な部分にです。」



彼女「もし、あなたが強い憤りを感じたとしたらどうしますか?」

私「怒ります。」

彼女「もし、怒ることが出来なかったらどうなりますか?」

私「怒りが溜まるでしょう。」

彼女「怒りが溜まったらどうしますか?」

私「酒を飲んだり、スポーツをして発散させています。」

彼女「なぜ発散させるのですか?」

私「溜めておくと体に良くないからです。」

彼女「何で体に良くないのですか?」

私「判りません。」



彼女「怒りなどの感情は目に視えませんが、一種のエネルギーと思って下さい。そのエネルギーは言葉や行動によって外に出さない限り消滅せずに、内部に蓄積されます。」

私「そうなのですか。」

彼女「そして、エネルギーの蓄積が限度を超えると、肉体上に病気となって現れることがあります。」

私「何でエネルギーが蓄積すると、肉体上に病気が出来るのですか?」

彼女「エネルギーの蓄積は霊的な部分に変化を起こして、その変化はいづれ肉体上に現れることになります。なぜなら肉体は)を表現する媒体として存在しているからです。」

私「感情がそんなに悪い物とは知りませんでした。」

彼女「感情が悪いと言うよりも、そんな感情がたくさん溜まるような不自然な生き方がいけないのです。」

私「不自然な生き方とは?」

彼女「すごく簡単に言ってしまえば、自分に正直に生きていないことになります。」

私「自分に正直に生きていないと、なぜ感情が溜まってしまうのでしょうか?」

彼女「あなたは動物が好きですか?」

私「ええ、大好きです。」

彼女「動物が大好きなのに、飼い主のいない保護された動物たちを殺処分する仕事を任せられたらどうでしょう。」

私「いやです。やりたくありません。」

彼女「でも上司の命令です。」

私「絶対にいやです。」

彼女「あなたは絶対にいやだと思っているにもかかわらず、殺処分を続けざるを得なかったとしたらどうなってしまうでしょう?」

私「具合が悪くなってしまうと思います。」

彼女「そうでしょう。1例を挙げて説明しましたが、自分の気持ちに正直生きていないと、好ましくない感情が溜まってしまい、それが高じると病気になってしまう可能性があるのです。」



彼女「あなたは今まで自分に正直に生きて来たと言えますか?」

私「そうではないかもしれません。」

彼女「どうしてそう思うのですか?」

私「実は小さい頃、親から厳しいしつけを受けていました。すごく怖かったのですが、どうすることも出来ませんでした。それから自分の気持ちを表に出さないようになり、周囲に気に入られるように生きて来たような気がします。」

彼女「自分の気持ちを、素直に言葉や行動で表現するのが本来の姿です。それが子供の時に出来なくなってしまったのですね。」

私「そうです。自分の気持ちをずっと押し殺して生きて来たのかもしれません。」

彼女「その押し殺して来た気持ちが、病気と深く関わっている可能性があります。」

私「先程例に挙げた、動物の殺処分と同じですか?」

彼女「その通りです」



彼女「別の質問をさせて下さい。この世に生まれて来るのは偶然だと思いますか?」

私「そうではないのですか?」

彼女「偶然などではありません。明確な目的を持って生まれて来ています。」

私「明確な目的?」

彼女「そうです。自分自身を成長させると言う目的です。どのようにして自分を成長させるのかは予め決まっています。残念ながら、生まれてしまうと判らなくなってしまいますが。」

私「私も決まっていたのですか?」

彼女「もちろんです。」

私「予定した通りに、私は生きているのでしょうか?」

彼女「実は、予定していた通りに生きるために病気になったのです。」

私「意味が良く判りません。この病気になるのも予定されていたのでしょうか?」

彼女「そうではありません。本当の自分を取り戻し、予定通りの成長をして行くために、病気になったのです。」



彼女「そのことに触れる前に、もう1つ話をしておくことがあります。」

私「何でしょうか?」

彼女「あなたの中には、2つの自分が存在しています。」

私「2つの自分?1つではないのですか?」

彼女「そうではありません。あなたは精神的葛藤を経験したことはありますか?」

私「あります。」

彼女「その葛藤は、2つの自分が存在しているから起きています。」

私「その2つの自分とは具体的に何なのでしょうか?」

彼女「生まれながらに存在しているの自分と、生まれてから作り上げて来た自分です。」

私「生まれながらの自分?」

彼女「真の自分であり、魂と思って下さい。」

私「では、生まれてから作り上げて来た自分とは何ですか?」

彼女「安全に快適に生きるために作り上げて来た自分と考えて下さい。自我と表現するのが1番近いのかもしれません。あなたは、気持ちを表に出さずに、気に入られるように生きて来たと言っていましたよね。それこそが作り上げてきた自分です。」

私「そんなことなど意識しないで生きて来ました。」

彼女「皆さん、そうおっしゃいます」

私「作り上げた自分がいるのはいけないのですか?」

彼女「そうではありません。人は誰でも作り上げて来た自分を通して自己表現をしています。ただ度を超して強くなり過ぎてしまうことが問題なのです。」

私「どう問題なのですか?」

彼女「先ほど、生まれて来た目的があると言いましたね。作り上げた自分が強くなり過ぎてしまうと、生まれて来た目的が果たせなくなってしまいます。」

私「どうして目的をが果たせなくなってしまうのですか?」

彼女「目的を果たすために、どう生きれば良いのかを知っているのは、潜在意識よりもずっと深い部分にある本当の自分(魂)です。しかし、作り上げて来た自分が強くなると、本当の自分が表に出なくなり、どう生きれば良いのか判らなくなってしまいます。」

私「どう生きるのかは、今まで自分で考えて決めて来たと思います。」

彼女「自分で決めてきたようで、実は本当の自分の想い(気持ち)に無意識に従いながら生きて来たのです。」



彼女「作り上げて来た自分が強くなると、どうしても安全で快適な方向に進んで行ってしまいます。」

私「どういうことですか?」

彼女「学校で仲の良い友達がいじめられていたとします。それを見たあなたはどう思いますか?」

私「助けてやりたいと思います。」

彼女「その一方で、助けに入り同じ立場になってしまうのを怖れて、やめようとする自分がいないでしょうか?」

私「います。」

彼女「それが作り上げて来た自分です。」

彼女「そして、助けてやりたいと思う自分こそが、本当の自分(魂)です。」



彼女「私たちは、本当の自分と作り上げてきた自分のせめぎ合いの中で生きていると言えます。」

私「本当はこう言いたい、こうしたいと思うことはたくさんありましたが、それをさせない自分が確かにいます。」

彼女「本当の自分の想いは、作り上げて来たもう1つの自分が強くなると、表現されなくなってしまいます。」

私「それが自分に正直に生きていないと言うことなのですね。」



彼女「本当の自分の想いを、言葉や行動によって、外に向かって表現する、それが自然な姿です。しかし、あなたは自分を押し殺して生きて来たので、想いが溜まりに溜まっていると考えられます。

私「その想いが原因で病気になったのですか?」

彼女「そうです。本当の自分を表に出さないために、表現されることなく溜まっていた想いが、肉体上に病気という別の形になって表現されたのです。」



彼女「ところで、病名を告げられた時の心境はどうでしたか?」

私「頭の中が真っ白になりました。」

彼女「思考が一時的に停止したのではないですか?」

私「そうです。何も考えられなくなりました。」

彼女「そんな時、自我の働きも極端に弱くなっています。」



彼女「自我(作り上げて来た自分)の働きが弱くなることで、代わって本当の自分(魂)が表に出て来ます。」

彼女「あなたは深刻な病気にならない限り、本当の自分が目覚めることはなかったと考えられます。

私「眠っている本当の自分(魂)を目覚めさせるために、病気になったと言うことですか?」

彼女「その通りです。病気は時に耐えがたい苦痛を伴いますが、その苦痛も魂を目覚めさせる触媒となっています。」

私「全く要らないと思っていましたが、全てに意味があったのですね。」



彼女「今まで、ガンをどう思っていましたか?」

私「命を奪ってしまう怖い存在であり、闘うべき敵だと思っていました。」

彼女「そうではないことが判ってもらえればうれしいです。今回は病気について、いろいろなことを話しました。次回は病気を治すお手伝いをしたいと思います。」

私「よろしくお願いします。」



                              《次回に続く