前回の続きです。(この物語はフィクションです)
私は彼女の言ったことを思い出していた。
これまで、自分を抑えて生きて来たのは確かであり、知らない内に想いが溜まっていたとしてもおかしくはない。
想い(思念)によって現実が変わって行くのは確かだが、肉体も変えてしまうのか?
私が罹った病気は、命を奪ってしまう恐ろしいものと思っていたが、本当の自分(魂)を目覚めさせ、成長させるために存在している、そう考えると怖さが和らぐ。
この病気をきっかけにして、何かが変わるのであれば、それは悪いことではないのかもしれない。
病気を治すお手伝いをすると彼女は言っていたが、今日は何をするのだろうか?
色々なことを考えている内に、彼女の家に到着した。
彼女「おはようございます。今日はお身体の具合はいかがでしょうか?」
私「相変わらず痛みはあります。」
彼女「前回はいろいろなことを話しましたので、少し驚かれたでしょう。その事実に基づいて、今日は病気を治すお手伝いをしたいと思います。」
私「私の病気は治るのでしょうか?」
彼女「無責任のように聞こえてしまいますが判りません。」
私「なぜ判らないのですか?」
彼女「説明が難しいのですが、治る時期が来ていれば治りますし、そうでなければ治りません。」
私「治る時期?」
彼女「そうです。これから私がヒーリング(霊的治療)を行います。あなたがその力を受け入れる時期が来ていたならば、病気は癒されるでしょう。」
私「力を受け入れる時期?」
彼女「少し説明が必要なようですね。病気は因果律の働きによって生じます。何らか原因があって、その結果として病気になります。」
私「私は内に溜まっていた想いが原因で、その結果として病気になったのですね。」
彼女「そうです。さまざまな想いが内部にあって、それが病気となって外部に表現されたのです。これまでの人生であなたの魂が成長をして、その想いを解放する時期が来ていれば病気は治るでしょう。」
私「想いを解放するとは?」
彼女「内にある想いが外に出されることです。あなたは悲しくなったら涙を流すでしょう。それは悲しみの想いを涙によって肉体で表現して外に出しているのです。涙を流すとスッキリしませんか?」
私「します。」
彼女「イライラした時に、大きな声で叫んでいる人はいないでしょうか?」
私「時々見かけます。」
彼女「それも叫ぶことで想いを出して、楽になろうとしているのです。」
私「でも、怒りや憎しみの想いを外に出してしまったら大変なことになります。」
彼女「それは相手を傷つけてしまうことになりかねないので、いけないことです。」
私「それでは解放されないままではないですか?」
彼女「そうです。表現することが難しい想いが、内に溜まってしまうのです。」
私「健康に良くないのですか?」
彼女「良くないので、人は体を動かしたり、趣味に没頭したり、おしゃべりをしたりして解放させようとしているのです。」
私「ストレス解消ですか?」
彼女「そう言うことです。」
私「私は、想いを解放することは出来なかったのですか?」
彼女「そうです。あなたは幼かったので言葉や行動で表現することが出来ず、しかも強い想いだったので、解放されなかったのです。」
彼女「過去の表現出来なかった想いが、時を経て因果律の働きによって、肉体上に病気となって表現されています。」
彼女「ところで、あなたは今どんな思いですか?」
私「これから先どうなってしまうのかを考えると、不安でいっぱいです。」
彼女「そうですか。実はその強い不安も過去に生じていた表現できなかった想いであり、この病気を通して表に出て来ているのです。」
私「怯えていた時に、生じていたものですか?」
彼女「そうです。」
彼女「不安や怖れの想いが溜まって全く気付かずにいたのですが、知らない内にあなたの成長を妨げていたのです。」
私「どうして不安や怖れがあると、成長が妨げられるのですか?」
彼女「もし目の前に、挑戦するべき課題や困難が立ちはだかった時に、心の中に不安や怖れがあったらどうでしょう?」
私「しり込みしてしまいます。」
彼女「そうですね。」
私「しり込みをしてしまうのは、そんなにいけないことなのですか?」
彼女「あなたがこの世に生まれて来たのは、挑戦したり困難や障害を乗り越えながら、成長して行くためにです。怖れや不安があると、挑戦したり乗り越えて行こうとする気持ちが削がれてしまいます。それは成長の機会を1つ失ったことを意味します。」
私「臆病になるのはいけないのですか?」
彼女「そうです。臆病は成長の大敵です。」
彼女「病気が判って、あなたはどんな気持ちになりましたか?」
私「何で自分がこんな病気にならなければいけないのか、正直腹立たしかったです。」
彼女「その憤りの想いも、過去に生じていた想いと考えられます。何で自分だけがこんなひどい思いをしなければならないんだと思っていたはずです。」
私「確かにそうです。」
彼女「憤りの想いがたくさん溜まっていて、人のために何かをしようとする気持ちになれるでしょうか?」
私「それは難しいかもしれません。」
彼女「人や社会のために奉仕をすることは、自分の成長につながっています。しかし、想いを溜めたままでいると、その機会を逃してしまいます。病気を通して、成長を妨げている想いが表現されているのです。」
私「病気にならない限り、気付くことはなかったのですか?」
彼女「そうです。」
彼女「あなたは内に溜まっている想いに気付いて、それを解放させるために、病気になったのです。」
私「心に何か重苦しいものを感じてはいましたが、それが過去に生じていた想いとは気付きませんでした。その想いを解放するためにはどうすれば良いのでしょうか?」
彼女「不安も怖れも、怒りも憎しみも、ある1つのものによって解放されます。」
私「それは何でしょうか?」
彼女「愛です。」
私「愛?」
彼女「もし、あなたが愛で満たされていたとしたら、不安や怖れや怒りや憎しみを感じるでしょうか?」
私「感じません。」
彼女「それらの想いは愛と相反するものなので、同居することは出来ません。愛で満たされたのなら解放されるのです。」
私「愛で満たされるために、どうすれば良いのでしょうか?」
彼女「霊的に成長すれば、自然に愛で満たされるようになります。」
私「どうしてですか?」
彼女「愛の始源である神とより高い波長で同調するからです。」
私「高い波長で同調?」
彼女「神と人とは、一人の例外もなくつながっています。しかし、低い波長でつながっている人もいれば、高い波長でつながっている人もいます。霊性によってその高低は決まります。」
私「低い波長でつながると、どうなるのですか?」
彼女「生じる想い(思念)に愛の要素が少なくなります。別の言い方をすると、怒りや憎しみ怖れなど、愛に反する想いが生じやすくなります。」
私「では、霊的に成長するためにはどうすれば良いのでしょうか?」
彼女「人や社会のために、奉仕をしていれば成長します。」
私「ボランティア活動ですか?そんな時間は私にはありません。」
彼女「あなたは仕事を通して社会に貢献し、また家族のために頑張って来たはずです。」
私「それで霊的に成長しているのですか?」
彼女「もちろんです。それも立派な奉仕です。奉仕をすればするほど、高い波長で神とつながるようになります。これまでの奉仕によってあなたの魂が成長し、高い波長でつながれば、想いを解放することが出来るかもしれません。」
彼女「ただ、あなたには神とつながるのを妨げているものが存在しています。」
私「それは何でしょうか?」
彼女「この前お話した、生まれてから作り上げてきた自分(自我)です。作り上げて来た自分が強くなり、本当の自分(魂)が覆い隠されていると考えられます。より強くつながるためには、魂が前面に出ていないといけないのです。」
私「もう少し判るように説明して下さい。」
彼女「判りました。魂が地球本体、神が太陽、そして作り上げて来た自分を空に浮かぶ雲だと思って下さい。雲があると太陽の光を遮ってしまいます。なければ光は降り注いで、太陽からより多くの光を受け取ることが出来ます。」
私「でも、雲がなければ地球は熱くなり過ぎてしまいます。」
彼女「雲は地球を守るために必要なものです。しかし厚くなり過ぎると光を遮ってしまい、太陽の恩恵が受けられなくなってしまいます。同様に、作り上げて来た自分(自我)は必要なものですが強くなり過ぎると、魂と神のつながりが弱くなり、恩恵が受けられなくなってしまいます。」
彼女「前置きが長くなりましたが、これからヒーリングを行います。」
私「名前は知っているのですが、どんなものですか?」
彼女「ヒーリングとは、魂に大量の霊的エネルギーを注ぎ込むものと考えて下さい。」
私「霊的エネルギー?」
彼女「生命を生かしている力です。肉体は外部から物的なエネルギー源である食物を取り込んで活動していますが、魂は目に視えない霊的エネルギーを取り込んで活動しています。」
私「違う力によって生きているのですか?」
彼女「肉体と魂は次元が違うのでそうなります。」
彼女「霊的エネルギーによって魂は活動し、様々な想い(思念)が生まれています。想い(思念)は、精神を通して、肉体で言葉や行動となって具現化されています。言い方を変えると、霊的エネルギーは魂から精神、精神から肉体へと巡って、最後は物的エネルギーとなって外に向かって解放されています。」
私「肉体を使って言葉や行動にして、外に向かって表現出来ないと、想いと言うエネルギーが溜まってしまうのですね。」
彼女「その通りです。」
彼女「ヒーリングのエネルギーによって、溜まっている想いが外に押し出されると考えて下さい。淀んでいる小川が、上流から流れて来た大量の水によって、一気に綺麗になる、そんなイメージです。」
私「ヒーリングのエネルギーの量が大きければ大きいほど良いのですか?」
彼女「一概にそうとは言えません。先程、成長を妨げている想いは愛によって解放されると言いましたが、ヒーリングエネルギーが高い愛を帯びているほど、想いは留まれなくなり解放されます。」
私「ヒーリングのエネルギーが愛を帯びている?」
彼女「エネルギーの始源は神だから愛を帯びているのです。そして霊界にいる医者のような存在によって最適化されて、ヒーラーを通して、地上の人に届けられます。」
彼女「そして、ヒーリングによって魂が賦活化されて、目覚めさせることができれば、目的は達成されたことになります。」
私「神の愛によって、魂が目覚めて、病気が治ると言うことですか?」
彼女「そう考えて差し支えありません。」
彼女「ただし、ヒーリングによって魂が目覚め、想いが解放され、霊的次元で浄化が起きたとしても、肉体的次元で反映されない時があります。」
私「それはどんな時ですか?」
彼女「一昔前まで、ガン細胞を消滅させようとする薬(抗ガン剤)が使われていましたが、ご存知でしょうか?」
私「知っています。」
彼女「その薬の副作用で、ガン細胞を排除する(免疫)機能に大きなダメージを与えてしまうと、せっかく想いが解放されても、肉体上で治癒が起こらなくなってしまいます。」
私「そんなに悪いものだったのですか。」
彼女「霊的に病気を捉えてなかったので、そんな愚かな行為がまかり通っている時代がありました。人間が作った薬によって、神から与えられた病気を治癒させる機能を台無しにすることは、絶対に許されません。」
彼女「それでは始めましょう。ベッドの上に仰向けになって下さい。」
ベッドに横になると、彼女は患部である胃の上に手を置いた。
彼女「これから始めますが、体が温かくなったり、患部がピリピリしたりしするかもしれませんが心配しないで下さい。もし眠くなって来たら、眠ってしまっても構いません。」
私「はい。」
しばらくすると、彼女が手を置いている周辺が温かくなり、体がポカポカして来るのを感じた。
悲しくもないのに、何故か涙がボロボロと流れている。
すごく安らかな気持ちになって来た。
そして、いつの間にか眠ってしまった。
どれ位眠っていたのだろうか?
目が覚めると、胃の痛みがなくなっていることに気付いた。
そして、重苦しく感じていた何かがなくなり、心がとても軽くなっていた。
彼女「ご気分はどうでしょうか?」
私「すっきりとして、良い気分です。」
彼女「それは良かったです。」
私「これで終わりでしょうか?」
彼女「そうです。ヒーリングの力が私を通して流れて行きました。」
私「ありがとうございます。」
彼女「あなたの魂が目覚めて、病気が癒やされることを祈っています。」
戸外に出ると、景色がいつもと違って見えた。
木々の葉、流れる雲、鳥の鳴き声、全てが生命力に溢れ、活き活きとして、輝いている様に感じられた。
この一体感のようなものは何だろう?
数日後、街の医者のところに行き、病気の状態を診てもらうことにした。
私「紹介されたところに行って来ました。今日は病気の状態をもう1度調べてもらいたいのです。」
ドクター「判りました。それでは前回と同じ検査をします。」
検査が始まったが、なぜか知らないが良くなっている気がした。
ドクターは驚いた様子で「前回あった病巣が見当たりませんが、何か処置を受けましたか?」
私「お腹の上に手を置いてもらっただけです。」
ドクター「医学的に説明がつきませんが、どうやら治癒しているようです。」
心の中にあった重しが取れて、何とも言えない解放感を味わっている。
病気が治ったのはもちろんうれしいが、それよりも自分が生まれ変ったような感じがして、それがうれしかった。
本当に大切なものが、はっきりと視えて来て、新たな人生が始まった。
数十年ぶりだが、実家に帰って親に会おうと思う。
あれだけ自分を苦めていた親も、実は苦しんでいたのが判ったからだ。
今になって思いが判るようになったのは、眠っていた私の魂が目覚めたせいかもしれない。